母と猫
小さい頃から猫を飼いたかった。
可愛くてふわふわで、とにかくあの姿が好きだった。
子供の頃に「猫を飼いたい」と言ってはいたが、私の母は相当な猫嫌いだった。
庭のある実家にはたびたび野良猫ちゃんが糞をしに来ていて、その度に母は憤慨していた。
また、猫からする意地悪、気まま、懐かないといったイメージも先行していたようで、母はとにかく猫が嫌いだった。
私もその小さな体験からか、なかなか猫との生活に踏み切れずにいた。
しかし、私は昨年、大きな決断と共に彼を我が家に迎えた。
その際も母からは「気軽に遊びに行けなくなる」と怒られもした。
不安いっぱいスタートした、彼と私と母の関係。
しかし、早々に母は彼の魅力に完敗する。
彼は母に優しく、母が来ればその足元にすりすりと頭を擦り付けた。
なでなでをねだり、その結果。
最初は手で触れなかった母が最近では彼を自然になでている。
頭を寄せ合い、笑い合っていた。
母は今でも猫は好きではないらしい。
ただ、前よりテレビに映る猫を「かわいい」と言っている。
指摘すると怒るので、口にはしない。
彼の部屋の入り口にある電気のスイッチカバーは、かわいい猫柄だ。
母が彼の為に選んだもの。
このカバーを見る度、胸がいっぱいになって、母に感謝の気持ちを抱いている。
歩み寄ってくれたのは彼だけではなく、母もだからだ。
私はいつか来る別れに怯えながら、彼と過ごす幸せな今を噛み締めている。
今日も一日はあっという間に過ぎていった。